日帰りで箱根を楽しめる、便利な切符を開発
COJ:「箱根旧街道・1号線きっぷ」とは?
「箱根旧街道・1号線きっぷ」は、小田急線の往復割引乗車券と、
箱根登山線の小田原駅~小涌谷駅間および箱根登山バスの小田原駅~元箱根港・箱根町間が
何度でも乗り降り自由な乗車券をセットにした周遊券です。
箱根旧街道や国道1号線周辺の散策や観光に便利なことから、
「箱根旧街道・1号線きっぷ」と名付けました。
そのうえで、この周遊券にはカーボンオフセットを導入することにしました。
2008年9月から発売を開始し、10月1日からご利用いただいています。
小田急グループではこの他に、(株)小田急トラベルが旅行商品「夏休みの想い出」「箱根でおしゃべり」という
宿泊とロマンスカーのセットプランを発売しました。
これは、ロマンスカーをご利用する際に排出されるCO2を算出し、オフセットをするものです。
さらに、2009年3月には、神奈川中央交通(株)が、法人向けにカーボンオフセット定期券「グリーンエコパス」の発売を開始しました。
グリーンエコパスは、バス定期券では日本で初めてカーボンオフセットを導入した商品です。
「公共交通の良さを知っていただきたい」という想いがきっかけ
COJ:カーボンオフセットを導入したきっかけを教えてください。
2007年末に、日本カーボンオフセット(COJ)さんがカーボンオフセット事業を始めるというプレスリリースを拝見し
「鉄道やバスなど公共交通のエネルギー効率の高さを伝えるためにカーボンオフセットという仕組みを活用できないか」と考えたのが最初のきっかけです。
移動に伴うCO2排出量をオフセットすると、CO2の排出が経済的価値へと変化します。
「排出したCO2の重さ」より、「排出したCO2の価格」の方が分かりやすいため、
例えば同じ区間を自動車で移動した場合に比べて、鉄道、バスならCO2排出量が少なくて済む、
ということを明確に伝えることが出来ると考えました。
こうした考えの下、志を同じくする鉄道事業の営業担当者や小田急グループ各社とカーボンオフセットの活用について検討を進めました。
その結果、「箱根旧街道・1号線きっぷ」は、箱根の自然や歴史文化を楽しんでいただくことを目的としたサービスであるため、
環境への配慮と親和性も高いと判断し、カーボンオフセットを導入することとしました。
COJ:日本カーボンオフセット(COJ)のサービスを利用しようと思った理由は?
当時はCERを利用して小口でカーボンオフセットサービスを提供するプロバイダーは少なかったと思います。
国連認証のCERなら、温暖化対策として一定の実効性が保たれ、さらに日本政府の京都議定書目標達成にも直接貢献できるため、
COJさんのサービスを利用しようと考えました。また、理事の方々の顔ぶれを拝見し、信頼性が高いと思いました。
社内で議論を重ねたうえで、実現に至りました。
COJ:商品の開発にあたって苦労した点は?
まず、カーボンオフセットという概念や仕組みが分かりにくい、という点があります。
理解されなければ、導入の意義が薄れてしまいますので、どうすればお客さまや社内に伝わるのか、検討を重ねました。
また、当社の温暖化対策として、カーボンオフセットの位置づけを明確することに心がけました。
カーボンオフセットはあくまで補足的な取り組みであり、自らCO2削減を進めるとともに、
利用しやすい公共交通サービスを提供していくことが重要であるという点については、社内でしっかりと議論できたと思っています。
振り返ってみると、苦労というよりも、楽しいプロセスだったと感じます。
お客さま、社内からもスムーズに受け入れられました。
COJ:サービスを導入してからのお客さま、社内の反応は?
公共交通サービスは、お客さま一人ひとりから直接お声をいただける機会が少ないため、
売上げなどの数値からお客さまの反応を推測することになるのですが、
当初の目標に比べ売上げは伸びていますので、ご好評いただいているのだと感じています。
ご利用いただいたお客さまには、「カーボンオフセットで温暖化対策に貢献した」という心地よさも感じていただければ嬉しく思います。
また、目新しい取り組みだったためか、メディアにも取り上げていただけました。
社内でも、大きな混乱もなく、すんなりと受け入れられました。
社会的に地球温暖化への関心が急速に高まってきた時期であったことに加え、
事前に周知の策として社内報などで段階を踏んで説明をおこなってきたこと、
発売前の2008年6月~7月にグリーン電力でロマンスカーを走らせるなどの試みをおこなっていたことなどが功を奏したのだと思います。
商品やサービスとの親和性を考えながらオフセット商品を開発したい。
COJ:今後の課題、やりたいことはどんなことですか?
小田急グループは、鉄道やバスなどの公共交通ネットワークを有していますので、
自らCO2削減に努めるとともに、利便性の高いサービスの提供を通じて低炭素社会づくりに貢献していくことが重要だと考えています。
カーボンオフセットは、こうした基本的な活動にしっかりと取り組んだ上での、有用な補足的手段の一つだと捉えています。
こうした考えの下、小田急グループでは、「箱根旧街道・1号線きっぷ」やバス定期券、旅行商品など、
カーボンオフセットを導入したサービスを拡充してきました。
今後は、ますます環境への配慮が求められると考えられますので、そうした声に応えるためにも、
商品やサービスとの親和性を考えながらカーボンオフセットの導入を検討していきます。
また、一般的に「カーボンオフセット」と聞いてすぐに分かる人がまだまだ少ないので、
限られた時間や文字数の中で、分かりやすい表現でカーボンオフセットを人々に伝える必要があると考えています。
その方法の1つが生活に身近な企業がカーボンオフセット商品を提供し、知っていただくことです。
小田急グループは、「移動」「旅行」など生活に身近なサービスを提供していますので、
これを活かして、今後もカーボンオフセットを広めていくことに貢献していきたいです。
ただし、カーボンオフセットはまだ発展途上だと思いますので、
プロバイダーや利用企業などが協力し合い、より良い仕組みを作っていく必要があると思っています。
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